<金曜は本の紹介>
本書は、「文学界」の1996年10月号、1997年5月号、1997年10月号、1998年3月号に連載された「椎名誠」の純文学小説です。
「椎名誠」はエッセイやノンフィクションで有名ですが、本書は彼の中学時代から高校、県立高校の土木科の助手、写真大学時代の生活について書かれたものです。
第1章の「砂の章」では、1960年代初期の中学3年生の「おれ」が、同じ中学の不良たちに袋叩きにあってから友人の「策次」や「アーム」とともにケンカの達人の「ゆう」さんに月謝300円を払って通い、「ケンカ」の極意をひとつずつ学んでいきます。
「ケンカで勝つには、ナイフが出てこない限り、睨み付けたまま突進していって、鼻でも口でもとにかく最初の一発に全力をこめて殴りつけるのが一番早い。人間は鼻のまん中を殴られるのがとにかく一番つらい」
「棒か鉄のパイプを持っていたら口を狙うのが一番いい。前歯を狙って殴りつける。歯を折ったらそこで戦意が相当鈍る。拳で口を狙うときは自分の手を注意する必要がある。歯では拳がよく切れる。」
「走るように突進していって、相手の鼻の下に頭突きをくれてやる。相手の両耳をしっかり握って引きつけるとうまくいく」
「鉄やパイプで目を狙うのはまずい。失明させると罪が重くなる。あいた口の中にパイプを突っ込むと死ぬことがある。効果があるのは棒やパイプで「すね」をぶったたくこと。膝の皿でもよい。」
「接近していって、強引に抱きつき、膝を相手の金玉に叩き込むのが効果的。」
「とにかくどんな時でも最初に接近しちまうことだ。襟首を掴んでおいて野郎の顔を殴れ。殴ってから飛びのく。」
「本当にもっと強くなるためには一撃でモノを言うパンチの強さと少しぐらい殴られても怪我しない体をまず作ること。」
「パンチを強くするためには、まず土を叩くこと。それから土に拳が慣れたら平版にロープを巻いてそれを地面に立てる。ちょうど自分の拳が水平に突き当たる位置にロープがくるようにして、これを毎日100回以上左右の拳で叩く。最初は指の表面から血が出たりするが、我慢して毎日撃ちつづければ、石より堅い拳になる。同時に腕立て伏せを1日100回ぐらい毎日やって胸を厚くする。強いパンチは胸の厚みからでてくる。それから撃たれて一番弱い腹を鍛えるために腹筋運動をきっちりやること」
「いったん殴っちまったらあとは怖くもなんともない。だから相手よりもとにかく早く力を込めて殴ってしまうんだ。ケンカは最初の一発なんだ。」
「馬乗りになったら、相手のあいた口に何か入れちまえ。泥でも石でもなんでもいい。鼻で息ができるのだから死にはしない。口の中に何か突っ込まれたらそいつはもう絶対に反撃できない。反撃された恐ろしい奴ほどそのチャンスを狙うんだ。」
そして、祭りの日に不良のリーダーを見つけ、習ったとおりに拳を叩き込み、馬乗りになって相手のあいた口に草を押し込み、またいくつかのパンチを目の間に撃ち込みケンカに勝利します。
第2章の「風の章」では、高校生になった「おれ」が土建屋のバイトで知り合った「デラ安」の力を借りて自分の部屋を増築する話と、高校の不良たちと一戦を交える話があります。15~6人に囲まれ、角材で「牛久」の突き倒して「逃げるときは、攻撃のようにして、怒鳴りながら逃げろ」を実践します。
第3章の「草の章」では、高校卒業後、大学受験の資金を得るために県立高校の土木科の助手として働きます。ここでも何度かケンカとなり、2本の歯を折られます。また20代半ばの女性高校事務職員から宿直中に迫られます。
第4章の「火の章」では写真大学に入ったものの期待に反してつまらなく、叔父のアパートで厄介になりながら、金属会社の倉庫で重さ数10kgのの金属を運ぶ生活が書かれています。そして、2本の歯を折った相手を見つけ出し、相手の両足を棒でぶったたき、ケンカに勝利します。
本書は、その他いろいろな場面がでてきますが、椎名誠の当時の殺伐とした「いらだち」と「ゆううつ」と「暴力」の時代を描いています。ケンカの勝ち方に興味がある方には、とてもお勧めな本です^_^;)
<目次>
砂の章
風の章
草の章
火の章
あとがき
解説
<今日の独り言>
2歳1ヶ月の息子は、パパが絵本を読んであげようとしても、絵本係はママと勘違い?していたようでここ数ヶ月は「ママが読め!」と意思表示していたのですが、最近は喜んでパパの読み聞かせを聞くようになりました。しかも1冊読み終わっても、何故だかもう一回読むようにせがみます・・・
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