<金曜は本の紹介>
ライブドア事件は、2004年9月期の決算が、粉飾決算として立件されましたが、筆者は2005年9月期の第2四半期(中間期)からライブドアの監査に関わり、監査報告書に署名しています。
そして筆者はこの立件の原因となったM&Aチャレンジャー、VLMA1号、VLMA2号のファンドを使った仕組みを解明し、その解散をライブドアの宮内氏・堀江氏などに要求し、その結果2005年7月にはファンドは解散され、自己株を使った錬金術は2度とできなくなっていました。
つまり、筆者によって、ライブドア事件の原因となったファンドは解散され、違法行為はできなくなくなっていたので、ライブドアは正常化されていたのですが、それでも東京地検特捜部は立件に踏み込んだようです。
筆者も事情聴取を受けますが、特捜部は筆者を非常に評価したようです。
というのは、仕事の記録は嘘をつかない正直なもので、筆者の堀江氏・宮内氏らに対する”イジメっぷり”が報告書のかたちで克明の残されていたからです。真面目に仕事を取り組んでいれば評価されるという典型的な例だと思います。
この本は、ライブドア事件を監査人の立場から書いたもので、真相を解明していてなかなか面白かったです。かなりお勧めです!
以下はその
他興味をそそった箇所です。
・筆者が事情聴取された内容は概ね次のとおりだった。特捜部の強制捜査だから威圧的に行われるのかと思ったが、検事は終始フレンドリーな雰囲気で聞いてきた。
(1)違法取引の首謀者は誰だと思うか
(2)ライブドア取締役の宮内氏と(株)ゼネラルコンサルティングファーム(GCF)の代表取締役・小林元氏の関係について
(3)港陽監査法人とGCFの関係について
(4)投資事業組合の自社株売却益還流スキームとその会計処理
(5)ロイヤル信販及びキューズ・ネットに対する売上取引に関する監査手続きについて
・ロイヤル信販及びキューズ・ネットに対する売上取引を最初に発見したのは監査チームのスタッフで2004年11月2日のことだった。2004年9月期の決算に係る会計監査の現場で、そのスタッフはライブドアの売上取引をつぶさにチェックしていたのだ。もっとも期末日近くにドカッと15億円もの多額の売上が計上されたわけだから、スタッフがその異常さに気付いたのも当然である。売上取引の監査手続きの基本中の基本だが、期末日近くの大量の売上取引は要注意である。
・過去の粉飾決算との違い
<過去の粉飾事件>
・山一證券:2720億円、日本長期信用銀行:3100億円、カネボウ:800億円
・粉飾の動機:倒産を回避するため(危機回避型)
・手法:全くの架空売上計上。費用の繰り延べ。損失隠し
・特徴:お金が動かない。帳簿上の数字の辻褄あわせ。バランスシート型の粉飾。問題の先送り(急場しのぎ)。そのまま行くと会社は倒産
<ライブドア事件>
・53億円
・粉飾の動機:時価総額を拡大するため(自己顕示型)
・実態の伴わない売上計上。資本取引を損益取引に偽装
・お金が動く。現金はどんどん増える。損益計算書型の粉飾。会社は倒産しない(もっとも、スキーム自体はどこかで破綻)
・私は、監査制度そのものの有効性は今もっていささかも揺らいでいないと思う。ただし、残念ながら最後は監査制度を支えている「人」の問題に行き着いてしまう。米・エンロン事件やカネボウ、ライブドア事件にしても、監査責任者自身が監査制度を無効ならしめたことによって引き起こされただけなのだ。その点こそが、歯がゆいのだ。
・ライブドア首脳陣が嘘で塗り固められた粉飾の決算書を監査人に提出してきた時点ですでに、監査人にとっての勝負は終わっていたのである。通常、クライアントとの間に強固な信頼関係が構築されていれば、そして、監査責任者がクライアントから絶大な信頼を勝ち得ていれば、クライアントは粉飾なんてしてこない。業績が振るわずに苦しくても、普段から監査責任者が凛としていればクライアントは監査責任者を裏切るような粉飾行為などできるはずがない。
<目次>
プロローグ
第1章 強制捜査
1 東京地検特捜部
2 弁護士の見解
3 証券取引法違反
4 監査とは何か
5 監査人の裏切り
第2章 監査人から見たライブドア
1 署名拒否
2 「皆さん、騙されていたんですよ」
3 監査法人のジレンマ
4 ご都合主義の会計処理
5 暴走するベンチャー企業
第3章 粉飾の構図
1 錬金術を生むファンドの連鎖
2 ファンドをコントロールしているのは誰か
3 架空売上取引による粉飾決算
4 会計監査の現場
第4章 孤軍奮闘
1 監査軽視の負の遺産
2 火中の栗
3 禁じ手で解明したファンドの正体
4 「監査人降りますよ」
5 監査人の悔恨
第5章 監査人の苦悩
1 監査人の意志
2 会計士に求められる”自律”
3 監査制度は無力か
4 監査法人の解散
5 ライブドア監査法人?
エピローグ
あとがき
<今日の独り言>
2歳6ヶ月の息子が階段から5段ほど落ちてしまいました。左目の辺りに一直線に傷ができて、また「まぶた」が内出血で青くなってしまいました。もう階段は怖がるのかと思いましたが、元気一杯で、「クルクル!」と後で落ちた実況の説明までしてくれます^_^;)大丈夫なようです^_^;)
この記事へのコメントはありません。