<金曜は本の紹介>
「猿は猿、魚は魚、人は人 松下幸之助が私につぶやいた30の言葉(江口克彦)」の購入はコチラ
「猿は猿、魚は魚、人は人 松下幸之助が私につぶやいた30の言葉(江口克彦)」という本は、松下電器産業(現パナソニック)創業者の松下幸之助の晩年23年間を最も身近で仕え、松下哲学の継承者・伝道者として知られる江口克彦さんが書いた本です。
松下幸之助の経営の生きた手法を、折々に身近で聞いた珠玉の言葉とともに、できるだけ簡潔かつ具体的に書いたもので、二人きりのときに話してくれたものばかりとのことです。
「なぜわが社の経営はうまくいかないのか」と悩み苦しんでいる経営者だけでなく、一般の社員や、家庭でも大いに役立つ知恵やヒントが盛りだくさんの本で、とてもオススメです!
特に、人を大事にするというのはとても大切ということが分かりました。
以下はこの本のポイント等です。
とてもオススメです!
・経営が厳しいときに、社長が心がけなければならないことは、できるだけ社内を回り、社員一人一人に声をかけることである。「なんだ、そんなことか」と思われるかもしれないが、実はこれが、経営危機を克服するための重要なポイントなのである。厳しい状況は社員も承知しているから、どうしても気持ちが沈み、元気なく仕事に取り組んでいる。そのようなとき、社長が自分の職場にやってきて、一人一人に声をかけてくれるとなれば、社員の沈んだ気持ちも瞬時に明るくなる。しかも、社長は笑顔でいなければならない。
・松下さんは、特に社員の話には非常に熱心に耳を傾けた。社長が社員の話に耳を傾けると、双方に二つずつのメリットが生まれる。社員にとっては、社長が一所懸命に話を聞いてくれれば、まず「やる気が出る」ようになる。また、社長が喜ぶような情報を持っていこうと「勉強する」ようになる。社長にとってもメリットの一つ目は「社員から尊敬される」ようになることだ。社員の話をないがしろにしたり、途中でさえぎったりする社長に、絶対に社員はついてこない。社員に素直にものを尋ね、意見を求める社長こそが、尊敬され、信頼されるのである。二つ目は、何よりも自然に「情報が集まってくる」ようになるメリットだ。松下幸之助さんのところには、日々ひっきりなしにいろいろな人が訪れる。そういう人たちの話を聞くとき、松下さんは「その話は前に聞いた」とか「それは私の考えていることと同じだ」という応対を、ただの一度もしたことはなかった。いつもいつも「君はいいことを言うな」「君はなかなか賢いな」というふうに感心しながら聞く。椅子から身を乗り出し、相手の眼をじっと見ながら真剣に聞くのである。これにはみんな感激する。「あの松下幸之助さんが私の話を真剣に聞いてくれた。そして話の内容に感心してくれた。」と思うのである。すると人間とは不思議なもので、何か面白い情報が入るたびに、「よし、これを松下幸之助さんのところに持っていこう」「この話は松下の大将の耳に入れておこう」という気になってくる。結果として、自然と厖大な情報が入ってくることになる。
・不思議なもので、同じ部署にいるときは二人のウマが合わず、ともによい結果を出せなかったのに、別の部署になったら急に力を出し、それぞれが優れた仕事をするという場合がよくある。したがって、「どうしても部下のA君とテンポが合わないんです」と管理職が言ってきた場合、私はその意見を尊重し、組み合わせの変更を考える。しかし管理職が、「A君は仕事ができない。もっと能力のある部下をくれませんか」と言ってきたら、私はその管理職を絶対に許さない。仕事ができるとかできないとか、そんなことは簡単に言うべきではないのだ。もし、その部下に能力がないと本気で言っているのであれば、その部下の能力を見つけることができない上司が悪いのである。「私には部下を育てる能力がありません」と言っているのと同じことである。そんな人間に大切な社員を任せるわけにはいかない。私なら逆に、即刻その上司の処遇を考え直すかもしれない。
・だから私も、「会社では小声で話をしない、ひそひそ話をしない」ということを、PHPグループのトップになってからも心がけた。もちろん、人事や給与、プライバシーといったことについては、必ず相手と一対一で別室で話したが、それ以外は、近くに誰がいようと、新入社員がいようと、大きい声で話すことにしていた。小さな声で報告に来る社員がいると、松下さんのようにわざと大きい声で応じたり、「君、もっと大きい声で話してよ」とはっきり指示することにしていた。それが多くの社員の中に、無用な猜疑心や不信感を生み出さないことにつながった。その結果、彼らは私の話を信用して聞いてくれ、おかげで34年間、安定して経営を進めることができたのであろう。
・厳しく叱責するのは、場合によってはやむを得ない。優しく叱っても効果がない場合もある。しかし、激怒する場合でも、あくまでも冷静に考えて激怒すべきである。妙な言い方だが、「冷静に考えて叱り、感情をいっぱいに込めて誉める」のが、社員育成のコツだ。その逆は社員のやる気を失わせ、結局は、組織や部署の衰退をもたらす。叱った後の後味の悪さを残さないためには、叱りながら、あるいは叱った後で、社員の心に傷が残らぬようにフォローしてやることが大切だ。1時間も2時間も立たされ、叱られているときに、ふと「君の力があれば、できたはずやないか」と言われる。「君はもう充分にわしの考え方を理解しとるはずや。理解しているくせに、こういうことをやったらアカンやないか」こんな言葉をかけられると、厳しい叱責の中でも救われたような気持ちになっていく。「そうか、この日とは私に期待しているからこそ叱っているんだ。決して私を否定しているわけではないんだ」と思うことができる。
・また、松下幸之助さんは叱るのをスパッとやめる達人でもあった。私が松下さんの意に沿わないことをしたり、ミスを犯したりして厳しく叱られる。「しまった、ひどいミスをしてしまった・・・・・」とションボリしながら帰宅する。すると、家に帰ったのを見計らったように電話がかかってくる。まだ怒られるのだなと思った私は、落ち込んだまま、「先ほどは申し訳ございませんでした。今後は気をつけます」と口早に言う。すると松下幸之助さんは、こんなふうに応じる。「いや、あれはあれで、わかってくれたからかまへんのや。ところで君な、今、わしは新しくこういうことを考えてるんや。・・・・・早くやりたいんやけど、君、すぐに取りかかってくれへんか」先ほど叱った内容と、まったく別の仕事の話を持ち出してくるのだ。この鮮やかな切り替えに、私は何度も救われる思いがした。叱られるということは、要するに上司から「否定」されることだ。ところが、新しい仕事を与えられるというのは、一転して「肯定」されていることになる。先ほどまで否定されてションボリしていたのが、肯定されることによって逆に何倍もの元気が湧いてくる。「よし、頑張ろう」という気持ちになる。
・信頼されるトップになるためには、叱り方のコツだけでなく、社員に詫びる用意もなければならない。自分が間違ったときには、どんな若い社員に対してもきっぱりと潔く頭を下げる。それによって社員は、やるべきこととやってはいけないことの判断が身につくのである。
・社員は何を考えたらいいのか。どうしたらいいのか。「そんなことはあくまで社員が自分で考えるべきだ」と言う社長もいるかもしれないが、大間違いである。社員に「考えるヒント」「考える糸口」を示してやる方が、社員としても、自分の考えや企画を出しやすくなる。「ああ、社長のアイデアをヒントにすると、こういうやり方も考えられるな」「こういう企画も可能になるな」と、次々に社員自らが発想するようになる。
・方針とは「基本理念+具体的目標+最終目標」である。トップがこの三要素を打ち出さなければ、社員たちは、不平ばかりを言って、やる気を起こさずろくに結果を出すこともできない。大切なのはこの三要素のすべてを社員に伝えて初めて意味がある、ということだ。基本理念だけを伝えて具体的目標を示さないとか、逆に、具体的な数値目標だけは強調されるが、何のためにこの仕事をするのかの理念がアナウンスされないというのでは、結果に結びつかない。
・「畳の上の水練」という言葉がある。水泳は、いくら教室で理論を習い、畳の上で型の練習を重ねても、泳げるようにはならない。実際に水の中に入り、指導を受けつつ、ときには不覚にも水を飲み、足をばたつかせながら覚えていくものである。仕事や商売も同じことで、体験を重ねて初めて、さまざまなやり方が自分の身につく。企業の経営者や責任者は、このことをよく認識しなければならない。つまり、人材を育成するには、必ず「仕事の実践」を伴わなければならないのである。
・松下電器では、年初の経営方針発表会が、ときに1万人近くの幹部社員を集めて開催されるのが恒例だった。細かい数字の話は少なく、むしろ松下幸之助さんがしてくれる感動的な話が常に印象に残った。1年間の売上げ目標や利益目標などが事前に発表されていたということもあるが、松下さんはそれ以上に、「自分がどのような思い、どのような考えを持っているか」「社員にどれほどの期待をかけているか」「どのような思いで仕事に取り組んでほしいか」などについて、全身を使って烈々たる話をするのが常であった。その内容と迫力に感動を覚えない社員は、おそらく一人もいなかったと言っていい。目標を理解し、さらに心まで揺さぶられた社員の中には、涙を流す者も多かった。松下電器が60周年を迎えた年初の方針発表会は、特にドラマティックであった。松下幸之助さんはこのとき83歳。大いに話を盛り上げ、結びの際に、さらにこんなことがあった。「今日まで、このように松下電器が大を成すことができたこと、また、自分がやって来られたことは、これひとえに皆さんのおかげ。心から感謝申し上げたい」松下さんはこう言うと、壇上を降りて、1万人の幹部社員に向かって3度のお辞儀をしたのである。その光景に、会場には異様な興奮の渦が湧き起こった。とりわけベテラン社員たちは人目も憚らず泣き続け、涙を拭おうとせず、いつまでも拍手を続けていた。こうした大いなる感動が、松下電器の社員を奮い立たせ、とてもつもない成果に結びついたのである。感動なきところ、経営効果なし。自分で考え抜き、練り上げた「魂の言葉」で社員に語りかけなければ、経営を成功させることはできない。
・「昔話で「桃太郎」というのがあるやろ。桃太郎には3匹の家来がおる。猿とキジと犬。みんあ、性格も得意なことも違うわね。違うから、それぞれの役割が生まれ、力を合わせて鬼退治ができたわけや」多様な人材が必要なのは、社長の側近だけではない。会社そのものに、さまざまな個性や特徴を持った人が集まっていることが理想だ。個性豊かな社員たちをどう活用していくか、これが経営者の腕の見せ所である。
・上はハイレベルな経営判断から、下は現場の作業まで、社内のあらゆるスピードを上げること。重要なことなので繰り返すが、これこそが経営を成功させる最大の要因の一つである。そして、それを実現するには、社長が強力なリーダーシップを発揮するしかないのである。
・松下さんの基本的な考えは、以下のようにシンプルで骨太なものだった。
(1)まず「売上げ」の状況を見れば、会社が成長しているかどうかがわかる・
(2)「利益」を見れば、経営が成り立っているか、健全かどうかがわかる。
(3)「資金」を見れば、会社がいざというときの対応が可能かどうか、安定度がわかる。
(4)「在庫」を見れば、余分な負担を背負っていないかどうかがわかる。
(5)そして「借入金」があれば、これからの運転のやり方を考えていかなければならないことがわかる。
・「社員が立ち往生するような問題を最終的に処理するのが社長の役割だ」ということを、私は松下幸之助さんから、言葉と行動で繰り返し教えられた。社員が社長についてくるか、それとも遠ざかっていくか。社長を信頼するか、それとも不信感を持つか・・・・・。それは、社員を悩ませるさまざまなトラブルや問題について、「オレに任せておけ!」といえるかどうかにかかっている。それが言えれば、社員は安心し、さらに力を発揮する。社内はまとまり、成果は必ず上がる。ただ、それだけのことである。経営は、だから、騒ぐほどに難しいものではないのである。
・厳しい環境においては、社長は社員以上に動き、汗をかき、脳みそを絞って、マネジメントに取り組まなければならない。仕事において、工夫において、示唆において、効率において、成果において、社員の誰にも負けない働きをし、知恵を出さなければならない。社員以上に仕事をし、休日も心も休めることなく、頭を休めることなく、経営を考える。それが、責任を持って組織を率いる真のリーダーというものである。
・社長が矢玉を浴び傷を負う覚悟で先頭に立てば、会社は必ず危機から脱し、成長を遂げることができる。これが、私が体験から確信を持って言えることである。
・松下電器も1929年の恐慌で販売が半分以下に急減し、同年12月には、倉庫が満杯で製品の置き場所もなくなるという、創業以来の深刻な事態に直面した。松下幸之助さんはこのとき病気療養中だったが、幹部から、「危機を乗り切るためには、従業員を半減する以外に対策はありません」という提案を受けると、すぐに首を横に振り、次のような指示を出している。「これからますます発展しなければならないのに、せっかく採用した従業員を解雇するのは、自分の経営理念に反する。それゆえ、工場は半日勤務として生産はただちに半減させるが、従業員は一人も解雇してはならない。給料も全額を支給する。その代わり、全員で休日を返上して、在庫品の販売に全力を挙げよ」松下さんの指示を聞いた社員たちは歓喜の声を上げ、中には涙を流す者もいたという。それから全社員は無休で、山積みになった製品の販売に努めた。その結果、二ヶ月で在庫を一掃し、工場は半日操業をやめてフル生産に戻るという活況を呈することになる。
・社長というのは、本来、何のために存在しているのか。極論を言えば、不況に苦しんでいるときや、苦境に陥ったときのためである。厳しい状況の中、会社のため、社員のためになるべく犠牲を少なくし、むしろ苦境をチャンスと捉え、発展策や打開策を考えて指示を出す。そのために社長は存在しているのだ。
・松下さんはおそらく自分の人生すべてを受け入れていたのだと思う。自分に起こるすべてのこと、自分にふりかかってきたすべてのことを「運が強いからそうなった」と解釈した。父親が身代を潰してしまったこと、身体が弱いこと、学歴がないことなど、周りの状況をすべて受け入れ、自らの運の強さの現れと捉えた上で、努力を傾注すべきポイントを考えたのである。自分で自分を肯定しなければ、誰も自分を肯定してくれない。自分で自分の力を信じなければ、誰も認めてくれない。まずは自分の人生と、人生で起こる出来事を肯定する。いかなる事態が起こっても、「自分にとっては実に運がよかった」と受け止める。それがすべての出発点であり、事実、松下さんは生涯その姿勢を貫いた。
・松下幸之助さんは、なぜ経営者として大きな成功を収め、苦境、不況をいくつも乗り越えてくることができたのか。それは、何と言っても社員を大事にしたことに尽きる。社員を大事にし、成長させることによって、お客様が評価してくださる良質の製品をつくった。
・松下幸之助さんの経営は、常に「人間大事」を中心に進められ、決して「数字大事」で進められたことがない。たとえば松下さんは1969年、ある経営懇談会で講演し、自らの考える松下電器の発展の要因について以下の9つを挙げている。
(1)電気に関する仕事が時代に合っていたこと
(2)人材に恵まれたこと
(3)理念を掲げたこと
(4)企業を公のものと考えたこと
(5)ガラス張りの経営を行ったこと
(6)全員経営を心がけたこと
(7)社内に派閥をつくらなかったこと
(8)方針が明確であったこと
(9)自分(社長)が凡人であったこと
<目次>
はじめに
第1章 声をかけよ
第2章 耳を傾けよ
第3章 雑談をせよ
第4章 区別をしても、差別はするな
第5章 小声で話をするな
第6章 秘密を作るな
第7章 仕事を任せきれ
第8章 叱った後は、必ずフォローをせよ
第9章 必ず具体案を示しつつ、指示を出せ
第10章 大きな方針を全員に示せ
第11章 10年後と20年後を読んで対策を立てよ
第12章 仕事と身体で実践しなければ、知恵は本物にならない
第13章 部下と「横の関係」を作れ
第14章 リストラは無能社長の証明である
第15章 理屈と感性で「なぜ」を説明せよ
第16章 「見える要因」より「見えない要因」に取り組め
第17章 笑われてもいい、夢を語れ
第18章 ビジョンある経営者の会社に、寿命はない
第19章 「1000%の情熱」と「魂の言葉」を社員にぶつけよ
第20章 報告者たちを同時に社長室に招き入れよ
第21章 「秘書役」と「参謀役」と「補佐役」の3本柱を持て
第22章 社長の決断が遅い会社は、一瞬でつぶれる
第23章 BSもPLも読むな
第24章 ライバルは他社ではない、「昨年の自社」だ
第25章 外部とのトラブルを必ず引き受けよ
第26章 矢玉を浴び血を流して、率先垂範せよ
第27章 真剣に考えても、深刻に考えるな
第28章 人を育てない経営者に、成功なし
第29章 どんな出来事も、幸運の証である
第30章 9つの要因が企業を発展させる
松下幸之助 年表
<今日の独り言>
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