<金曜は本の紹介>
「「がまん」するから老化する」という本は、高齢者精神医学の第一人者が、現時点での老化予防・アンチエイジングに関する考えや具体策についてまとめたものです。
特に、フランスのアンチエイジングの権威であるクロード・ショーシャ博士とは知り合いで、その必要な栄養を摂らないとかえって老化が進み、また体を酸化させない食生活と、食べても太らないころに体を若返らせるほうがはるかに老化予防に役立つし健康にもいいという考えにい賛同していて、それらについて書かれています。
つまり、いまの多くの医者が推奨している予防医学的・節制的健康法は老化を逆に進めてしまうようです。
そして、太めの人のほうが、やせ型より6~8年も長生きすることが明らかになっていて、これは太めの人のほうが免疫機能が高かったり、うつ病になりにくかったりするためのようです。
それから、働き続けることや、恋をすること、人生を楽しむことは長生きにつながるようです。
この本は、健康や長生きのヒントになる本だと思います。とてもオススメです!
以下はこの本のポイントなどです。
・人間の体も脳も、加齢よりも使わないことによって衰えると言える。20代で家に引きこもっている青年よりも、50代でフルマラソンを走ろうと練習している主婦のほうが体力があって若々しいことは、容易に想像がつく。歳を取ったときこそ、使い続けている人とそうでない人の差が大きいことが如実に表れる。廃用の影響も大きいし、その逆に使い続けたときの効果も大きいのである。そういう意味では、歳を取っても意欲がある人と、意欲のない人とでは老化度にきわめて大きな差がついてしまうことがおわかりいただけるだろう。
・さらにガンも老化病と言える。これも浴風会病院での経験だが、高齢者の遺体を解剖すると、多くの人はどこかに小さなガンが見つかる。ガンが死因ではない人も、ガンを抱えているのだ。先述したように、私たちの体の中では細胞分裂が一生涯ずっと続いている。とくに子供が成人になるまでは、ほぼきれいに細胞をコピーして成長する。たとえば子どもの小さな肝臓や腎臓は、細胞のコピーを繰り返してどんどん大きくなる。若いころは正確できれいにコピーされていたのに、年齢を重ねるほどコピーにミスが出やすくなる。ミスコピーによって出現した出来損ないの細胞は、体にとって異物である。異物=DNA情報が違うものは免疫細胞が殺すという仕組みがあるから、通常、ミスコピーされた細胞は処理されている。この免疫機能は歳を取るほど衰えてくるのだが、逆に出来損ないのコピーは歳とともに増えるのだ。出来損ないの細胞が勝手に増えてしまうのがガンだから、歳を取るほど多くなるのも道理である。40代、50代のガンで亡くなると悲劇的だから、中年世代に多い病気だと思われがちだが、実は高齢者の大多数は小さなガンを抱えているのに、気がついていないだけなのだ。
・少し極端な例だが、激しい運動を続けてプロスポーツの選手になることは、自分の寿命を縮めることと引き替えのようにも思える。現実に、引退した野球選手や大相撲の力士には年齢のわりに老けている人が多いし、早世率も高いようだ。生活が荒れているからとも言われるが、それでもやはりスポーツ選手は、若くして亡くなったという訃報をよく聞く。老化防止の観点からすると、体を酷使せずに頭を使っているほうがよさそうだ。
・2006年、アメリカで29年間にわたって追跡した国民健康栄養調査の結果が発表されている。これによると、いちばん長生きなのは「太り気味」とされるBMI25~29.9で、18.5未満の「やせ型」の死亡率はその2.5倍も高かったのだ。日本でも2009年、厚生労働省の補助金を受けたある研究結果が発表された。40歳の時点での平均余命を見ると、もっとも平均寿命が長かったのは、男女ともにBMI25~30である。平均余命は男性で41.6年、女性は48.1年だった。逆にもっとも短かったのはBMI18.5未満で、平均余命は男性で34.5年、女性で41.8年と、7年ほどの差がついたのだ。BMI25~30は、身長が170cmの男性なら体重72~87kgに当たる。昨今なら完全にメタボと言われてしまう体型だ。日本では「太りすぎ」という分類にされているが、実はもっとも長寿だったのだ。また、「普通」「肥満」とも平均寿命にほとんど差はつかなかったのに、
「やせ」だけは目立って平均余命は短いのだ。
・「メタボは長生きできない。やせたほうがいい」というのは、欧米の背景と理論を日本に持ち込んだだけのようだ。統計によると、体脂肪率が30%を超える人がアメリカは30%だが、日本は3%にすぎないという。やせる必然性について、日本人も同じかと改めて問い直すと、案外当てはまらないことが多いように思う。
・次ページの表は、戦後の日本人の栄養摂取量の変遷である。終戦翌年の1946年から高度経済成長の間はほぼ一貫して摂取エネルギー(カロリー)は増え続けている。これが少しずつ減って2005年には終戦翌年とほとんど同じカロリーになっている。「食べ過ぎ」で「飽食」しているかのように信じている日本人だが、いまや戦後間もないころと同じくらいしか食べていない小食の国民なのである。
・私の生まれた1960年でも、肉は1日に20gも摂っていない。高度成長を経て、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われるようになった1980年ごろから、肉を減らすように言われ始めるのだが、この時点でも肉の摂取量は67.9gにすぎない。近年、日本人の肉の摂取量は1日あたり80g前後である。一方、アメリカ人は約300g、ヨーロッパ人なら約220gも食べている。その前提があって、ヨーロッパでは目標値を150gにしたのだ。そもそも前提となっている肉の摂取量が極端に違うのだから、減らせばいいというものではないことは誰にでもわかる。
・肉とともに敵視されるのが、コレステロールである。善玉・悪玉があるとされつつも健康をむしばむものとして、忌み嫌われている。しかし、これも程度の問題である。70歳の高齢者を対象に追跡調査した「小金井研究」によると、いちばん死亡率が高かったのは、コレステロール値が169未満の低いグループだった。次いで正常とされるグループ、もっとも長生きするのは男性では219まで、女性は220~249の正常よりやあ高めのグループだったことが判明している。
・欧米ではコレステロールが高い国は心筋梗塞も多いと信じられているのだが、同じくらい肉を食べているフランスやイタリアは、心筋梗塞による死亡が少ないのである。そのことからワインに含まれるポリフェノールなど抗酸化物質を摂ることで、コレステロールが高くても心筋梗塞で死なないとも考えられている。有害なのは酸化したコレステロールではないかという説もあるほどだ。アメリカ、ドイツ、イギリスなどと比べると、フランスやイタリアではワインをよく飲むことに加えて魚介類をよく食べる。魚の脂肪はコレステロールの害を防ぐ働きがあるとされ、魚介類を常食しているのもいいことだと考えられている。
・必要な脂肪を摂りつつ、体にため込まれた脂肪を燃焼させる働きのある脂肪を摂るほうが賢い。たとえばオリーブオイルが体にいいと言われるのは、脂肪を燃やす脂肪だからだ。
・基本的に人間の体の組成では、脂肪は15~25%あるわけだから、摂らなければいいというものでは断じてない。「よい脂肪」もあるという点を押さえておきたい。ただ古い油や、高温や光などで劣化した油はオメガ3であろうがオメガ9であろうが、体に悪い。こうした酸化した油は避けなくてはいけない。
・どうも糖尿病に関しては血糖値を下げればいいというものでもないし、低血糖の害が大きいこともわかってきた。事実、高血糖でたちまち死亡することはめったにないが、低血糖は短時間で死を招く。つまり糖尿病では、血糖値が高いこと自体が問題なのではなく、動脈硬化を進めることこそが厄介な事柄なのである。
・コレステロール値が高い人のほうが、うつ病にかかる人が少ないし、かかっても治りやすい。
・通常では気がつかないアレルギーを見つけ、アレルゲンとなっている食べ物を避けることで、体の酸化が抑えられ、老化を食い止められる可能性は高い。ショーシャ博士のクリニックでは、腸内細菌の状態も検査している。尿からわかるのだという。ただ残念ながら、こうした検査にはそれなりに費用がかかる。
・このような検査をしたほうが、もちろん正確に判明する。だが、それだけの費用をかけないとまったくわからないというわけでもない。自分の体の声に耳を傾ければ、食物アレルギーは発見できる。食べたものを全部書き留めておいて、体がだるいとか、何となく気持ちが悪いといった感覚があったとき、数時間前に何を食べたかチェックするのだ。気になる症状になる前に、いつも同じものを食べているようなら、それがアレルゲンである可能性が高い。
・毎日の食生活で誰にでも勧められるのが、酸化を防いで老化予防の効果が期待できる食品を摂ることだ。先に、ヨーグルトを食べると腸内細菌のバランスを整えられると述べたが、酸化防止に日常の食事に取り入れたい食品がいくつかある。細胞の炎症を抑える働きで注目されるのが、エキストラバージン・オリーブオイルに代表されるオメガ9の油である。ワインに含まれるポリフェノールは、心筋梗塞の死亡率を下げていると考えられており、誰もが認める抗酸化物質の代表だ。
・臓器は24時間、休みなく働いているわけではなく、それぞれに活動している時間帯と休んでいる時間帯がああくる。消化に関わっている肝臓、膵臓、腎臓、胃は代謝のリズムが大きく異なっている。にもかかわらず、私たちはこのリズムを無視して食事をしているので臓器を無理に働かせており、その負担のためにホルモンバランスなどが崩れてしまう。これもまた細胞の炎症の一因であるという。だから臓器の活動時間に合わせて最適な食事をすれば内蔵の負担が少なく、細胞の炎症も少なくてすむ。
・朝は肝臓が活発になっていく時間帯だ。脂肪を代謝してタンパク質の合成が、午前11時ごろのピークに向けて高まっていく。だから、朝食では一日のエネルギーの元になる脂肪と、新しい細胞の材料となるタンパク質を摂るのがよい。良質な脂肪とタンパク質の豊富な卵、魚、鶏肉などが勧められる。エネルギーを効率よく燃焼させるためには、少量の炭水化物も必要なので、ご飯一膳とかパン1枚くらいは食べたほうがよい。抗酸化物質を含む野菜も摂りたい。そう考えると野菜の入った味噌汁にご飯、焼き魚と卵料理という日本の伝統的な朝食メニューは理想的だ。ショーシャ博士は「世界一素晴らしい」と誉めている。朝食を甘い菓子パンとコーヒーで済ませる人もいるかもしれないが、実はこれはもっとも内蔵に負担をかける。朝は膵臓が不活発なために、糖分を分解するインスリンの分泌が十分ではない。そんなところに吸収の早い糖が入ると、膵臓の負担が大きくなって細胞に炎症が起きる原因となる。同じ理由でコーヒーには砂糖を入れないことだ。さらに言えば、コーヒーよりもお茶がよい。お茶に含まれるポリフェノールの一種、カテキンは抗酸化作用が強いからである。
・昼食は肝臓の代謝機能が高まっている時間だから、やはりタンパク質をメインに摂ることが好ましい。昼食ではとくに野菜を摂ることを勧めてい。生野菜はビタミン類や酵素も豊富なので、先述した代謝のサイクルを円滑にする。昼にサラダをたくさん食べるのは賢明なのだ。ポイントは、ドレッシングにエキストラバージン・オリーブオイルを使うことだ。さらに、少量の炭水化物も効率のよいエネルギー代謝のために必要だ。
・膵臓の代謝が活発になって、インスリンの分泌がピークになる16~17時は、甘いものを食べてもいい時間帯だ。膵臓の負担が少なく糖を処理できるので、甘いものを食べても太りにくい。間食として抗酸化作用のあるものをなるべく摂りたい。ショーシャ博士は、カカオ成分が70%以上で、ミルクなどの入っていないダークチョコレート(ブラックチョコレート)を挙げている。カカオは公算か物質を作り出すとともに、神経伝達物質のセロトニンやドーパミンのバランスよい生産に関わっている。間食にはリンゴ、ブルーベリー、イチゴ、オレンジなどの果物も勧められる。抗酸化作用があり、インスリンを急激に増加させることもないので間食としては最適だ。チョコレートと一緒に食べてもいいし、チョコレートだけ、果物だけでもよい。
・夕食は肉類を多く摂りがちだが、夕方は肝臓の代謝機能が下がっている時間帯なので、動物性脂肪は控えたい。動物性脂肪を完全燃焼させられないので、内蔵に負担をかけてしまうからだ。ただしエキストラバージン・オリーブオイルや、脂の乗った魚で良質な脂肪を摂るのはかまわない。また膵臓も不活発になっているため、砂糖や炭水化物、果物を控えることが望ましい。アルコールも糖分の一種なので、炭水化物と同じ代謝のされ方をする。吸収が早く、血糖値を急激に上げて細胞の炎症を引き起こす。本来ならアルコールも控えるべきだが、飲むなら赤ワインがおすすめだ。抗酸化物質であるポリフェノールが多く含まれ、心筋梗塞のリスクを下げると考えられている。食事と一緒にたしなむことと、水も合わせて飲むことで血糖値の急激な上昇が抑えられる。夜、代謝活動が上がってくるのが腎臓だ。日中、肝臓や膵臓の代謝で作られた老廃物を排泄のために処理する時間帯である。水分を多めにとって、うまく処理を進められるようにするのが理に適っている。
・「食事ではまずタンパク質から」と覚えておくと簡単だ。タンパク質を少し摂って、肝臓が少しずつ動き出すような食べ方をして、締めにご飯、最後にデザートというパターンが好ましい。血糖値が緩やかに上がるので、内蔵に負担がかからない。たとえば日本の会席風の料理なら、魚介などタンパク質の食材を使った先付が出て、刺身、焼き物と続く。油を使った揚げ物が出されるとしたらその後だ。タンパク質から摂ることになるので、血糖値は緩やかに上昇する。最初からインスリンを大量分泌させたりしないので、揚げ物が出てくることにはかなりの満腹感がある。締めで軽くご飯を食べて、最後にデザートとして果物が出るという、タイムリー・ニュートリションの理論に適合する賢い食べ方だったのだ。
・無自覚にテレビを見ていると、人間は老化する。というのは、考え方をルーティーン化させるからだ。テレビで健康にいいとされた食品がたちまち売り切れるのは、本当かどうかの検証もなく「テレビが言っていたから」という理由で買いに行く人が、。きわめて多いことの証拠である。
・歳を取ってからも、働いているほうが長寿だし健康だ。就業率と老人医療費との間に相関関係があるのがわかる。70歳以上も4人に1人が働いていて就業率が全国1位の長野県は、男性の平均寿命が全国1位、女性が3位とトップクラスである。しかも一人あたりの老人医療費が全国でも最小の約60万2000円だ。もっとも高かった北海道の約93万円に対して、およそ65%にすぎない。北海道の高齢者就業率は、全国で4番目に低い。すなわち長野県は、日本でもっとも老人医療費をかけずに、日本一の長寿を達成していることになる。これは2000年のデータだが、2007年版の「厚生労働白書」でも、長野県の高齢者就業率は1位、老人医療費はもっとも少ない。老人医療費がもっとも高かったのは福岡県になったが、福岡県の高齢者就業率は全国で3番目に低いのだ。
・同じようなDNAを持ち、いまや日本中で同じようなものを食べていながらこうした差がつくのは、働いているか否かの違いが大きい。少し前までほとんどの企業で60歳が定年だったが、法律によって引き上げられた。平成18年4月1日以降は62歳となり、段階的に65歳まで延長される。これを「国は財政が厳しくて年金を払いたくないのだろう」と憤慨する人もいるかもしれない。しかし「働いているほうが感情の老化予防にもなるし、若々しくいられる」と肯定的に捉えることもできるのだ。
・高齢者は地味にするのが当然だと思われているから、ややもすると「年金でカラオケに行くのはいかがなものか」「年金生活者がパチンコに行くとはけしからん」といった非難になりがちだ。しかし年金生活者はしっかり遊んでくれたほうが消費につながるし、それ以上に前頭葉を刺激することになって免疫機能も上がる。つまり高齢者がお金を使って遊ぶことは、病気のリスクを減らすことにもつながるから、「お年寄りはもっと遊べ」と言いたいのである。
・もし金融資産税を年に1%取ったとすると、20年長生きしたら20%目減りすることになる。こうなるとお金を使わざるをえなくなる。しかも銀行預金には金融資産税はかかるけれども、国際は金融資産税を免除にすると、無利子国債も出せることになる。だから無利子になれば、いま膨大な額になっている国債費の一部が浮くわけだ。大反対を覚悟で金融資産税を導入したほうがいいと思う。個人金融資産1500兆円のうち現預金が1000兆円ある。金融資産税が1%なら10兆円である。これは消費税の4%分に当たる。
・ブドウ糖が足りなくなれば、即座に脳に悪影響がある。糖分と酸素は脳にとって最重要な物質なのだ。だから脳に酸素が足りなくなるとすぐにあくびが出てくるし、必要なものに対しては欲求が出るように人間の体はできている。味覚はその大切な機能である。人間が「美味しい」と感じるのは、甘いもの、脂肪分、うま味成分=アミノ酸である。自分の体に必要なものは美味しく感じるように、生物進化の過程でできあがっているのだ。甘いものはエネルギーにしやすい糖分だし、脂肪は効率的なエネルギーであるとともに細胞幕の生成や修復に欠かせない。食事で摂ったタンパク質はアミノ酸に分解されてから、私たちの細胞の材料になる。
・人間は進化の過程で、体が欲しているものを美味しいと感じ、それを食べてきたから生き残ったと考えられるので、美味しいと思うものを食べることは馬鹿にはできない。ただ、飢えの心配がなくなった飽食の時代になると、本能が壊れてきて、必要以上に甘いものや脂肪を摂ってしまう場合がないわけではない。それでも甘過ぎないものや、脂肪分をほどよく落としたほうが美味しく感じることも多いわけで、味覚と必要としている栄養の関係は連綿と続いているのである。さらに言えば食べること自体、幸せなことだ。美味しいものを食べるという快体験は、免疫機能の維持やうつの予防にいい影響を与えている。
・ことに問題が大きいのが思春期のダイエットだ。臓器の発達期に重なるから、この時期に低栄養の状態が続くと、後から栄養を足したからといって発達してくれるとは限らない。たとえば子宮や脳は、思春期に成長し損なうと、その後の発達は悪くなる。私は精神的に不安定な子どもが増えていることや、これだけ不妊に悩む人が増えている背景は、明らかに思春期にダイエットを煽りすぎているためだと確信している。
・血圧も血糖値も、低いほうがはるかに怖い。高齢者の医療に携わっていると、下げるのは非常に怖いことだという認識がある。アンチエイジングと健康の本当の第一歩は、「体重は減らしたほうがいい」「何でも低いほうが健康によさそうだ」など、素朴な概念から抜け出すことかもしれない。
・アルコール依存になるほど飲むのは論外として、健康に悪影響のない量はある。ショーシャ博士はワインでハーフボトル(360cc)までは大丈夫だという。日本酒も2合、ビールで大瓶1本程度だ。日本人は少し酒に弱いからその半分としても、このくらいの量なら、老化には悪影響がないようだ。
・タバコは止めたほうがいい。明らかにガンになる確率は高くなる。またガン以外にタバコには2つの大きなリスクがある。その第一が、動脈硬化を進めることだ。そのため喫煙者のほうが明らかに心筋梗塞や脳梗塞になりやすい。もう一つのリスクが肺気腫である。酸素と二酸化炭素を交換している肺胞という組織が破壊される病気で、息を吸っても吐き出せず酸素を取り込めないから、空気中なのにおぼれるようなもので非常に苦しむ。
・憧れのスターを間近にして、血を熱くするだけでホルモンのバランスが若返るのだ。心の働きがホルモンの分泌に大きく関わっていることを、改めて確かめた思いがした。手を握るわけでもなければ、二人で間近に会話するわけでもない。ましてセックスなどしなくても、ホルモンは盛んに分泌される。いわゆる「追っかけ」ですら、ホルモン補充療法に匹敵するほどなのだ。毎年、ディナーショーに行く人は、それで若返っているとも言えそうだ。数年前の韓流ブームでは、「追っかけ」をする中高年女性が大量に現れて、揶揄や批判をされた。しかし若返りという意味からは、文句を言われるようなことではない。若返りの効果があった人も多かったはずである。若さを保ちたいなら、中高年こそ胸をときめかせる体験が大切なのだ。
・もともとバイアグラは、狭心症の治療薬として開発されたものだ。血管拡張作用が心臓よりも陰茎に対して強力に働いたため、EDの治療薬として世に出たのである。ところがバイアグラの作用は、それだけではなかった。最近、血管内皮機能も高めることが注目されているという。要するに、血管の内皮が正常に筋肉のような形で動く働きをさせるので、動脈硬化を起こして流れの悪くなった血管の若返り作用があるというのだ。飲み続けると血管が若返って、さまざまな体の機能も改善する。たとえば耐糖能(上昇した血糖値を正常に戻す能力)が向上したり、酸化ストレス(生体内で活性酸素種の生成と消去システムのバランスが乱れ、活性酸素値が過剰になる状態)を減らしたりといった効果があるそうだ。
・食生活の欧米化は、日本人をかなり若返らせたと考えられる。深いシワの刻まれた老婆も見かけなくなった。もちろん都市化や就業構造の変化もあるけれども、栄養面の改善は見逃せない。魚に加えて肉をしっかり食べるようになって、日本人の皮膚も若返った。同様に血管も若返っている。昭和40年代まで、日本人の死因トップが脳卒中だった。これは肉をほとんど摂っていなかったために、タンパク質不足だったことが大きい。若く健康な人の血管はゴムのように弾性があるのだが、タンパク質が不足している人の血管はもろいのだ。
<目次>
まえがき
第1章 老化とは何か
若返る日本人
さまざまな老化学説
歳を取るほど、使わないことによる衰えがひどくなる
体の機能は、使い続けることで高いレベルを維持できる
年齢とともにアルツハイマー型認知症は急増する
動脈硬化もガンも老化病である
怖いのは心の老化、感情の老化
ホルモンバランスの老化と男らしさ、女らしさ
何歳からアンチエイジングが必要か
スポーツが健康的とは限らない
外見と老化の意味
第2章 メタボのウソ
やせると長生きできるのか
現代の日本人には当てはまらない?
日本人はもっと肉を食べてもいい
コレステロールは本当に悪いのか
完全な善玉もなければ、まったくの悪玉もない
よい脂肪と悪い脂肪
飢餓への備え以外にも脂肪には役割がある
「よい脂肪」も摂取の比率が重要
油の理論には流行り廃りがある
ガンで死ぬ国と心筋梗塞で死ぬ国
本当に正しい糖尿病の治療とは
高い血糖値を無理に下げるべきではない
メタボとうつ病
メタボと脳の老化
食事をおろそかにするのは節制とは違う
第3章 クロード・ショーシャ博士のアンチエイジングメソッド
中高年以降のやせ願望の悪循環
体を若返らせることでスリムな体に
体の酸化をどう防ぐ
「見えないアレルギー」が酸化を促進する
5年後、10年後にわかること
毎日の生活で避けたい食品、摂りたい食品を知る
タイムリー・ニュートリションの原理
日本食がなぜ老化にいいのか
更年期が怖いのは男女とも
ホルモン・リプレイスメント・セラピーの意味
栄養学を知らない日本の医師
何のためにサプリを飲むのか
みんなに当てはまる老化予防と、個別的な老化予防
第4章 心の若返りの意味
人は感情から老化する
前頭葉の老化予防
どうやって感情を沸き立たせるか
感情の老化予防のための三大要因
中高年以降、もっとも怖いうつ病にどう対応するか
こんな症状が出たら要注意
心の若返りと免疫機能
外見の若返りと、心の若返り
人づきあいと心の若返り
老化予防によいメディア、悪いメディア
生涯現役の意味
お金を使うことと遊ぶことの意味
お金を使うから大切にされる
金融資産税の検討も
第5章 がまんは老化の元
ヘタな節制がかえって老化を進める
ダイエットすと飢餓レベルに近づく
本当は恐ろしい栄養障害
美味しいもののほうが、体も心も老化させない
快体験は免疫力を上げる
ダイエットの何が怖いか?
血圧も血糖値も下げすぎのほうが怖い
酒とタバコの高齢者における意味とは
60代以下ならタバコは止める
性欲は若さの元
バイアグラは血管を若返らせる
第6章 日本人はなぜ若返ったのか?
島耕作と磯野波平
骨だけは老け込んでいる日本人
食生活の欧米化は本当にいけないのか
理想的な日本の食生活
「平均年齢」の意味
年齢差別禁止法
人の安心を買う福祉は安上がり
消費者としての生涯現役
高度成長期とバブルの意義
バブル期以降、中高年にも若者と恋愛の可能性が生まれた
老化予防の手本は医者より、若々しい人
<今日の独り言>
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