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「<勝負脳>の鍛え方(林 成之)」という本はオススメ!

<金曜は本の紹介>

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 この「<勝負脳>の鍛え方」という本は、脳外科医の林成之さんが、その仕事をしながら知り得たことを基に、スポーツでの勝負に勝つコツについてまとめたものです。

もちろんスポーツだけでなく、あらゆる勝負に参考となるものです。

 特に以下のスポーツで勝つ秘訣はナルホドと思いました。
 
 ・目的と目標を明確にする
 ・最初から100%集中する
 ・相手の攻撃は最大のチャンスで、攻撃への攻撃が大切
 ・相手の長所を打ち砕くこと
 ・相手の息づかい、汗、顔色、姿勢やバランス、目線、歩き方や走り方を観察し、相手の現在の状況を正確に把握する。そして勝ち方をイメージする
 ・脳の温度上昇に注意し、脇の下や首筋、背中の左右肩胛骨の間と首の付け根を冷やす
 ・脳を疲れにくくする
 ・勝負の最中はリラックスしない
 ・緊張しすぎたときは、息をできるだけ長く吐き出しながら、腹筋を締める、また笑顔をつくる
 ・結果を意識するのではなく、それを達成するために必要な技、作戦に気持ちを集中させる

また、運動神経の力を高めるには以下を心がけることが大切とのことです。この7項目のレベルアップを心がけて人間性を高めることにより運動神経がよくなり、運動の達人をめざすことも可能になるとのことです。
 ①性格を明るくして常に前向きの思考をする
 ②常にやる気をもって行動する
 ③何事も気持ちを込めておこなう(運動するだけではだめ)
 ④何に対しても勉強し、楽しむ気持ちを持つ
 ⑤感動と悔しさは生きているからこその宝物と考え、大切にする
 ⑥集中力を高める
 ⑦決断と実行を早くする

 とてもオススメな本です!

以下はこの本のポイントなどです。

・重症の脳損傷患者の脳の温度を測定したところ、患者が死に至るときには脳の温度が40度から44度にまで上昇することがわかったのです。ならば、脳の温度を下げればよいのではないか。治療にあたりながらこうして脳低温療法を開発した私たちは、この治療法によって、これまで救命が困難とされてきた瞳孔散大や呼吸停止を引き起こした患者も社会復帰を可能にするという、画期的な成果をあげることができたのです。

・ゴルフのカップのまわりに頭の中で1メートルの円をイメージして、その円の中にボールを入れなさいとアドバイスしている指導者を目にしますが、このように不明確なイメージの描き方は、ゴルフのような繊細で正確な技術を求められるスポーツには適しません。このような思考を導入していては、いくら練習しても上達しないばかりか、わざわざ上達しない脳をつくっているようなものです。答えは、カップインではなく、ボールの転がり方をイメージして打つことです。どこからどのようにカップインさせるかという目的達成までのプロセスを、イメージ記憶してパッティングするのです。

・しかし、ボールの転がり方をイメージ記憶すればよいとはいっても、それとて簡単なことではありません。そこでひとつ、イメージ記憶の性質をうまく利用する方法をお教えしましょう。自分の得意なこと、好きなことと連動させてイメージ記憶をつくるのです。女子プロゴルファーの茂木宏美さんは、「パッティングの極意はボールを打つときの音を聴き分けることだ」と話していたことがあります。つまり、うまくボールが転がったときのイメージを音で記憶しているというのです。茂木さんは、非常に音感の優れた人です。そして、自分の好きなこと、得意なことを考えるとき、心の機能が高まり、いわゆる「やる気」が出ます。その状態で何かを覚えれば、心と連動して記憶の機能も高まるというわけです。茂木さんはこの脳の特性をじつに巧みに利用しているといえるでしょう。音に限らず、自分の得意なものと連動させるこの方法は、あらゆる学習において非常に有効です。脳がイメージするとおりのパッティングの成功を積み重ねてゆくと、やがてカップとボールを見ただけでカップインが予測できる脳が生まれてきます。反対に、「入りそうになりな」と感じた場合は、手もそのように動きますので悪い予測が的中してしまいます。その場合は、必ず動作を中止して仕切り直すべきです。脳科学を使えば、プロに負けないパッティングの名手になることも不可能ではありません。

・私が心がけているのは、「いつでも真上に飛び上がれる状態の姿勢」を保つことです。この姿勢をとると、運動時に体の軸を作るうえに、長時間続けても疲れにくいので集中力が持続するようになります。ぜひみなさんも、日頃の生活で実践してみることをおすすめします。

・緊張時に心の安定を保つ方法として、呼吸法を使って副交感神経の機能を高める訓練を習慣的におこなっています。具体的には、両手を胸の前で突き出すようにして握りこぶしを作り、大きく息を吸って、ゆっくりとできるだけ時間をかけて息を吐きながら腹筋を固く締め、同時に握りこぶしを左右にねじるのです。これは、両肩甲骨の間にあるバランス姿勢を保つ筋肉のストレッチ運動になると同時に、心臓の脈拍に関係する自律神経を鍛える方法にもなります。朝めざめたときとか、時間の空いているときなどに習慣的にこの訓練を続けていると、徐々に異常緊張しない自分ができあがってきます。

・記憶を強いものにするためにも、記憶と連動する心を働かせるのがよい方法です。次の7つの項目を何度もよく見て覚えてください。これらを実行することで、学んだことを記憶する力は高まるはずです。心の機能が高まることによって、記憶も強くなるのです。ですから、たとえば学校の先生は、子供に好かれる人でなくてはなりません。嫌いな人から教えられたことは身につかないからです。好かれるというのは、なにも甘くして子供に媚びることではありません。厳しくても尊敬できる人であれば、子供はその先生を好きになり、先生の教えが砂に水がしみこむように脳に記憶されていくことでしょう。
 1.学習する・覚える
 2.感動する
 3.意欲を高める
 4.好きになる
 5.感情を込める
 6.香りを嗅ぐ
 7.よく考える

・みなさんが子供の頃からおこなっている、何度も繰り返して覚える方法はもちろん有効です。しかし、特別な訓練を必要としない方法もあります。それは、イメージ記憶が出やすい条件をつくる覚え方です。私がおすすめする方法は、次の7つです。
 1.人の話はできるだけ興味を持って、感動して聞くようにする
 2.覚える内容にも興味を持ち、好きになるようにする
 3.長時間の学習はできるだけ避け、時間を限定して集中して覚える。
 4.覚える内容を、自分の得意なものと関連づける。
 5.声に出して覚える。
 6.覚える内容について、自分で独自に考え、勉強する。
 7.覚えたものは、その日のうちに一度、目を閉じて声に出してみる。

・私たちが知能を高める、いわば「頭をよくする」ためには、
 ①ものを覚える、
 ②忘れた情報を脳内で再構成する、
 ③その内容を表現する、
 ④そこから独創的な想像力を生み出す、
という4つの段階があることを述べました。ものを覚える勉強ばかりしていても頭はよくならない理由も、これでご理解いただけたでしょうか。ものを覚えることに優れているだけでh、人間の知能全体の半分弱の能力が優れているにすぎないのです。私たちは、この知能獲得の仕組みを理解することで、もっと自分の才能を高めることができます。

・運動知能は表現知能のひとつですから、これを高めるためには訓練の反復が必要です。しかし、その際はモジュレータ神経群の機能を高めて、記憶と心を連動させること、具体的には、常に気持ちを込めた練習を日常化し、意欲と集中力を高め、感動や楽しむ心を大切にすることが必要なのです。コーチに怒鳴られながらやみくもに猛練習するだけではなぜ効果的な方法とはいえないかを説明しましょう。若い選手を育てる方法として、「おまえはできない、だめだ」と叱りながら意欲を高め、その成果を引き出そうとする指導がよくおこなわれています。新しいことや正しいことを強制的な力をもって植え付けるという意味で、この指導法にもプラスの効果があることは私も否定しません。しかし、反面、見逃してはならないマイナスの作用もあるのです。人間には自分を守りたいという自己保存の本能があります。しょっちゅう叱られていると、脳は苦しくなって、脳自身を守るために叱っている人の話を受け流すようになります。その状態が慢性化すると、だんだん人の話を真剣に聞かない脳ができあがっていきます。その結果、間違った考え方を持っても気づかない、少し違っていても気に留めない、訓練が長続きしない、習得がなかなか難しいといった困難か逃げてしまう脳、いわば逃避脳をつくりだす結果になってしまうのです。

・さらに問題なのは、脳を守る自己保存の反応は、とくに子供において出やすいということです。叱ってばかりいる両親のもとで育った子供は、人の話をよく聞かないことで自分の脳を守っています。親は、よい子に育てようとして叱っているつもりが、じつは子供をだめにするように育てていうという落とし穴にはまっているのです。したがって指導者は、苦しい作業ではあっても、失敗した理由を一つ一つ丁寧に教え、その具体的な解決策を明らかにして訓練させることが大切なのです。

・具体的なアドバイスとしては、できるだけ陽気にふるまう、他人に好意的にふるまう、そうありたいと思っている自分になったつもりで行動する、悲観的なことは考えない・・・・・といった習慣づけをすることが推奨されています。

・最初の目的を常に忘れず努力していると、遅かれ早かれ力は必ずついてきます。誰でも初めは実力がないので自分にはできそうもない気がするものですが、ここに紹介した
 ①目的と目標を明確にする
 ②目標達成の具体的な方法を明らかにして実行する
 ③目的を達成するまで、その実行を中止しない
という3つを守ることができれば、人間は必ず目的を達成する習慣を持っているのです。そのことさえ理解していれば、非常に困難と思われたことでも、時間はかかるかもしれませんが必ず達成できます。

・わかりやすい例としては、ゴルフのパッティングがあります。カップインは最終的な目的です。どのようにボールを転がすかが目標となります。とくにパッティングのように最初から目的の達成をイメージするのが困難な場合は、入るか入らないかでなく、どのように入れるかという目標に気持ちを集中させることが大切なのです。

・よく、自分はスロースターターだ、という人がいます。勝負が始まってからも、気力やリズムを整えるまでに時間がかかるというわけです。しかし、運動能力がいくら優っていても、このような選手はすぐれた勝負脳を持った相手にとってはカモなのです。オリンピックのソフトボールの試合で、ある国の選手が最初の打席で第1球目、ど真ん中のストライクを見逃しました。その選手はまた同じような甘いボールがくるだろうと安易に考えたのかもしれませんが、以後、相手のピッチャーはリズムを取り戻し、そんなボールは二度と投げてくれませんでした。試合開始の直後こそ、相手のピッチャーもまだ本調子のリズムに達していない大切な勝負どきなのです。そこで集中できず、あとから徐々にペースを上げていこうなどという考え方は、平凡なレベルの相手には通用しても、一流の相手には通用しません。

・攻撃を主体に戦略を立てること自体は私もおおいに賛成です。しかし、それは決して相手に攻撃を許さないためではないのです。いや、もっといえば、相手には攻撃をさせるべきなのです。というのも、攻撃を開始する直前や、攻撃を開始した直後は、人間は防御の体勢がとれないからです。ボクシングを想像してください。パンチを打つときは身体ごと勢いよく相手の方向へ向かっていくものです。その瞬間、もし相手から攻撃を仕掛けられても、とっさにかわすことは不可能です。そう、「攻撃への攻撃」こそは、勝負脳を働かせた戦い方の基本系なのです。

・「相手の攻撃は最大のチャンス」という考え方は、1対1で戦う協議に限らず、団体戦においても、攻撃の要となる選手めがけて集中的に攻撃を仕掛けることで同じような効果を生み出します。攻撃をまかされている選手は、防御に回ると弱いからです。「攻撃は最大の防御」という言葉には落とし穴があります。「攻撃には攻撃」を脳に叩き込み、独創的な戦略を編み出してください。

・一般的には、相手の弱点を攻めて勝つことがセオリーとされています。しかし、このような思想では一流の選手が集まるオリンピックや国際大会では勝てません。このような考え方で練習しているかぎり、自分を一流のレベルに高めることもできません。たとえ相手の弱点を攻めて勝ったとしても、それは本当に勝ったとはいえないからです。本当に勝ったといえるのは、相手の長所を打ち砕いて勝ったときだけです。この考え方に徹していると、相手の得意技を研究し、それ以上の技を磨き、これまでよりたくさんのことを練習し工夫して自分を高めていく道筋が見えてくるはずです。もし、過去に負けた相手であれば、負けた理由も明らかになってきます。そうした努力の結果、相手の長所と同じレベル以上の技を身につけ、そのうえで自分の技術を繰り出せば、相手を打ち負かす力をつけたことになります。

・情報として大切なのは、相手の息づかい、汗、顔色、姿勢やバランス、目線、歩き方や走り方などです。試合のたびに注意を払っていれば、いま相手がどのような状況で戦っているか、見ただけで察しがつくようになるはずです。とくに脳は苦しくなると自己保存の本能が働いて苦痛を避けようとするため、そのサインを無意識のうちに見せてしまうことがあります。マラソンランナーが後ろを振り返ってみたりするのもその典型的な行動です。そういうサインを見逃してはなりません。くれぐれも、先入観にはとらわれないでください。思いこみは勝負の大敵です。相手のわずかな気配も察知する繊細さ、そこから相手の現在の状況を正確に把握する洞察力を、実際の試合のなかで鍛えていってほしいと思います。

・自分の立場で考えても勝ち方のイメージが湧いてこない場合は、脳の使い方を変えて、相手の立場で現在の状況を考えるのです。このとき、もっとも大切なことは、できるかぎり自分にとって都合のよいように考えることです。

・追う側のイメージ記憶を逆用するおそろしい作戦があります。追われる側が速度を落として、わざと追い越させるのです。自分のほうが速いと確信して追う側は、それ見たことかと喜んで追い越します。ところがその瞬間、追い越されたほうが温存した力を爆発させ、思い切りスピードを上げて抜き返すのです。これをやられると抜き返されたほうは、一気に戦闘意欲を失うことがありまs。自分より弱いと思っていた相手がこんなに強かった、自分は間違っていた、もうだめだ、と思った瞬間、心と連動するモジュレータ神経群がダメージを受け、脳が著しく疲労すると同時に運動機能が極端に低下するからです。運動能力にもっとも影響を与える臓器は脳であり、試合中にその疲労が限界に達することは致命的です。これが怖いために、抜き去るときには抜き返されないよう差がつくまで一気に抜くことが長距離走では基本になっているほどです。

・運動をしている方は経験があると思いますが、汗をぬぐって、ちょっとでも体温が下がると、運動によってふえた脳内エンドルフィンの効果も手伝って快感を覚え、また頑張ろうという気持ちになるものです。このことからわかるように、脳の温度上昇に伴う自律神経機能の低下への対策としては、体中を流れる血液を冷やすことと、自律神経が敏感に反応する場所を冷やすことの二つの方法があります。前者は、血管が体の表面近くを通る脇の下や首筋を冷やします。後者は、運動バランスのツボである背中の左右肩甲骨の間と首の付け根を冷やします。

・人間がもっとも疲れを感じるのは脳が疲労したときです。厄介なこtに脳の疲労は運動時のみならず、ふだんの生活でも発生するため、自分では気づかずに脳に疲労をためた状態で練習することになりがちです。すると、なかなか上達しないとか、記録が伸びないといった悪影響が発生します。試合をすれば後半に弱くなり、とくに競り合った状態になるといつも結果を残せないという状態になります。「自分は勝負に弱い」と思いこんでいる人は、じつは脳に疲労をためたまま戦っているだけかもしれません。脳はさまざまな言葉でサインを送ってきます。どうも気分が乗らない、なにをするのも億劫だ、考えてプレーするのが面倒だ、この競り合いは勝てる気がしない、早い戦いを終わらせたい、などの否定的な言葉が頭に浮かぶのは、すべて脳の疲労症状です。では脳の疲労とは、どのようにして起きるものでしょうか。じつは、そこには心が深く関係しています。いろいろなストレスを抱えている、解決しない悩みごとがある、性格が暗くていつも悪い方に考える、技術が上達しないので焦っている、などの状態にあるとき、脳は疲労を覚えるのです。

・脳が疲労すると手足の微妙な動きが意のままにならなくなり、大事な勝負でせっかく鍛えた技を出すことが難しくなります。どんなに高い技術を持つアスリートでも、日常生活に悩みごとを抱えたまま、あるいは、勝負を意識しすぎて不安な心理状態のままで試合に臨んだのえは、高度な技を繰り返すことはできないのです。

・脳の疲労を取り除くためには、まず気のおけない友だちや家族と話をすることが有効なのです。ただし、そこで愚痴をこぼしているとよけいストレスになります。仕事や上司の話題は避け、必ず楽しい会話にすることが大切です。ただリラックスしているだけでは、体の疲労はとれても脳の疲労はとれないのです。また好きな香りを嗅ぎながら楽しい話をすれば、効果は倍増します。次に性格をあっ区することが第一条件となります。勝負に強いスーパープレイヤは、ほとんどが何事にもめげない明るい性格を持っています。また競技中は競技そのものを楽しむことも必要です。苦しい状況そのものを好きになることが大切なのです。

・脳を疲れにくくするには、脳にストレスのかからない生活を心がけることです。スポーツに限らず、仕事をやり残したり疑問を先送りしたりする人は、常に脳にストレスを抱えた状態になるので、ここ一番で力を発揮できません。日常生活において、てきぱきと一日の仕事や目標を達成する行動パターンをつくり鍛えてください。また、座り方や歩き方など、疲れない姿勢を意識することも大切です。いつでも真上に飛び上がれるような姿勢を意識すると、疲れにくくなります。縄跳びでは必ず元の位置に着地する、腰掛けた椅子からすばやく真っ直ぐ上に立ち上がるなど、どんな動作をするときもこの感覚を意識すると、脳の疲労が少なくなります。右や左に傾いて走るなどは、疲れやすい走り方の典型です。脳の疲労を誘導するTGFを早く体から排泄するために、入浴してリラックスすることや、脳内移行が可能で活性酸素の除去効果を持つテアニン(緑茶)の摂取、疲労回復効果があるビタミンB群を含んだ食べ物を摂ることも、脳の疲労回復に有効です。

・緊張しすぎたときには、具体的には呼吸法を活用することをおすすめします。息をできるだけ長く吐き出しながら、腹筋を締めるのです。

・2006年冬季オリンピックのフィギュアスケートで金メダルを手にした荒川静香選手が、非常にいいコメントをしていました。「順位はまったく考えていませんでした。新しい採点法に対応するあえに、演技ごとに自分の欠点を明らかにして、一つ一つをいかに完璧にこなすかに集中していました。一位になれたことにびっくりしました。」これを聞いて、本当にメダルを獲ることを意識していなかったのだろうか、と疑問に思われた方も多かったのではないでしょうか。しかし、もしメダルを獲ろう、一位になろうなどと意識して演技していたら、一位になれたかどうかはわからないと思います。ここに、緊張を意識するのではなく、それを達成するために必要な技、作戦に気持ちを集中させるのです。9回裏、二死満塁、得点差は一点という状況では、ピッチャーはバッターを打ち取るという結果ではなく、打ち取るためのボールをどう投げるか、あるいは自分が自信をもっているボールをどう投げるかに気持ちを集中させることです。目的と目標を分けて考えるという勝負脳を使うことが、自分のベストのプレーを可能にし、ひいては観ている人々にも感動を与えるのです。

・「勝ち負けを決めるのは教育上よろしくない」などといって子供たちに手をつながせてゴールさせている運動会は、脳は悔しさをバネに育つという脳科学を無視した指導といえるのです。私がこのような話をしているのは、競い合った相手を尊敬し、ともに高めあいながら生きることを本来望んでいる脳の機能を理解したうえで、勝負脳を身につけてほしいからです。勝つためには全力を振り絞って、最後まであきらめずに相手を打ち負かす努力を続けるべきです。しかし、それは決して、相手の人格や存在までも否定することではありません。勝負とは、それを通して相手を尊重することを学び、自分が成長するものです。

・日本は昔から、どちらかといえば野球やバレーボールのような団体競技を得意にしている一方で、一般的に一対一の陸上やテニス、スキーのような個人競技はあまり得意とはいえないように思います。逆に、個人競技はめっぽう強いのに、団体競技でになると不思議なほど冴えない国もあります。どうしてこのような差が生じてくるのかを考えてみましょう。わたしには、この差は食べ物の違いにきているように思えてならないのです。そのことは、動物の行動パターンをみると一目瞭然です。草や穀物を主食とする草食動物は、集団で行動して敵と対抗する方法で身を守っています。これに対して肉食系の動物は、一般に単独行動をとる傾向が強いものです。人間も草食系の民族には集団で農耕に従事していたときからの、肉食系の民族には一人一人が獲物を求めて駆け回っていたときからの遺伝子が組み込まれていて、その影響から逃れることができないのではないでしょうか。

・草食動物には、危険に直面すると体が固まって動けなくなる習性があります。これは、逃げるものを追いかけるという肉食動物の習性を逆用して、敵の目につかないようにする本能的な行動と考えられています。草食系の民族である日本人もまた、草食動物と同じように、危機的状況を迎えると体が硬くなって緊張する習性を受け継いでいるのです。

・日本人が勝つには「勝つ」という目的ではなく、「勝ち方、あるいは勝つために求められる技や作戦」という目標に向かって全力を傾けることです。じつはこの方法こそ、勝負を意識すると体が硬くなる習性を持つ日本人にとって理にかなった対策なのです。国際大会で優勝した日本人選手がよく「気がついたら一位になっていた」「結果は気にせずよいプレーを心がけた」などとコメントしているのは、決して謙虚さからだけではありません。日本人にとって、そう考えることこそが勝利への最短条件なのです。

・運動の達人、つまり運動神経がよい人とは、これらの神経群を、空間認知知能と連動させることがうまい人のことをいいます。

・きれいな姿勢をとれない人は、意外な理由として、足の長さが左右異なっている場合があります。椅子に正しく足をそろえて座ってみてください。膝小僧が左右きれいに並んでいたら問題ありませんが、少しずれていたら足の長さが同じではありません。このため歩くときに骨盤が短いほうに傾き、背骨はそのバランスをとるためにS字状に曲がってくるので、首が正確に正面を向けなくなります。腰が痛いとか肩がこりやすい人、靴底のすり減り方が偏っている人も、足の長さが異なっているのが原因です。このような人は、短いほうの足の靴を敷き革などで少し厚くすると見違えるようにきれいな姿勢になり、走るときの腰の切れがよくなるなど、あらゆる運動においてバランス感覚が飛躍的に上達するはずです。

・長距離ランナーが腸虚血を起こすのは、固定された腹部大動脈から支えのない腸間膜動脈が分かれていて、その先に、さらに重い腸がぶら下がっている構造に問題があるのです。飛び跳ねるように走る短距離走で長時間走ると、腸が上下に揺すられ、脊柱に固定されている大動脈から腸間膜動脈が枝分かれする場所に集中的に大きな力が加わり、腸間膜動脈の血管が根本のところでけいれんを起こしてきます。この状態がさらに続くと、腸全体の血の流れが悪くなって腹痛が発生するのです。これを避けるため、長距離ランナーは腰をあまり上下動させない走り方を心がけています。

・米などの(イネ科)穀物を主食としている私たち日本人は、草食動物と同じように長い腸を持っています。ですから便秘状態を完全に解消できないままレースに臨むと、残っている便で重くなった腸を携えての出陣になりますので腸の揺れが大きくなり、腸間膜動脈はけいれんのみならず伸びて細くなり、腸虚血は容易に発生します。もちろんストライド走法の選手ではそのリスクはさらに大きくなります。長距離ランナーは走る直前はエネルギー重視の食事を摂ることが多いと思いますが、同時に、腸の内容物がたまらないような食事にすることも大切なのです。またこれまでの報告では、盲腸(虫垂炎)の手術を受けた人や、胆嚢炎や膵臓炎を患ったために腸の癒着を起こしたことがある人は、とくに腹痛が起きやすくなるので注意が必要です。

<目次>
序章 脳を知れば勝てる
 脳は謎に満ちている
 勝負脳とは何か
 知らずに負けるのはもったいない
第1章 脳はこんな働き方をしている
 1「意識」「心」「記憶」は連動している
  意識は2つある
  CT画像に映った「穴」
  モジュレータ理論の発見
 2イメージ記憶とは何か
  バッターはなぜ豪速球が打てるか
  マイケル・ジョーダンの予知能力
  パットを成功させるコツ
  外科医もイメージ記憶を鍛えている
  お箸の国の人はやはり器用
 3こうすれば頭はよくなる
  記憶はこれほど頼りない
  「心」を使えば記憶は強くなる
  第三、第四の知能とは
第2章 これが勝負脳だ
 1「心・技・体」の落とし穴
  日本人にもっとも欠けている知能
  猛練習だけではなぜダメか
 2勝負脳を全開させる9つの秘訣
  1.サイコサイバネティックス理論を応用せよ
  2.最初から100%集中せよ
  3.相手の攻撃は最大のチャンス
  4.相手の長所を打ち砕け
  5.相手の立場になって勝ち方のイメージをつくれ
  6.脳の温度上昇に注意
  7.脳の疲労は勝負の大敵
  8.勝負の最中にリラックスするな
  9.緊張しすぎたときの対処法
 3人間は勝負を通して成長する
  自分の国を応援する本能
  過剰反応を克服する機能
  全米を感動させた勝負脳
  患者の命を救った勝負脳
第3章「心・技・体」を科学する
 1試合に勝つための「心」
  日本人は勝負弱い民族である!?
  日本人は「目的より目標」
 2試合に勝つための「技」
  運動神経は空間認知知能と連動する/脳の手術をしたら「スリ」失業
 3試合に勝つための「体」
  よい姿勢が勝利を呼ぶ
  長距離ランナーは腸が命
  高地トレーニングに関するおそるべき誤解
  野口みずきが偉大な理由
  人間はバランスをとるようにできている
あとがき

面白かった本まとめ(2011年上半期)

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