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角栄伝説(増山榮太郎)

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 この本は、時事通信社の政治記者として駆け出し時代から田中番記者として足かけ20余年、取材をかねて田中角栄の身近に接していた著者が田中角栄について書いた本です。

 生前の田中角栄に会ったことも見たこともない人が、あたかも見てきたようなことを書き、違和感を感じていたのに我慢ができず、自らこの本を書いたとのことです。秘話もあり、田中角栄の真実にせまった良い本だと思います。面白いです。とてもお勧めです。

 以下はこの本の少しだけのポイントです。

・田中角栄は大正7年(1918年)5月4日、新潟県刈羽郡ニ田村大字坂田1540番地(現在は柏崎市西山町に編入)に生まれる。父親は角次、母親はフメの長男だった。角栄が生まれた時は祖父母も健在で、姉2人、妹4人、一家11人の大家族だった。長男でたった一人の男の子ということで、周囲に可愛がられて育ったらしい。

・小学校6年間は全級で1番か2番を通し級長を務めていたが、母の苦労を思うと旧制中学への進学はあきらめ尋常小学校の高等科(2年間)に進む。

・普通は就職をするなら新聞の求人広告欄に目を通すものだが、角栄は逆をやった。新聞に「求職広告」を出したのだ。「夜学生、雇われたし、住み込みよし」と。この斬新なやり方が以外にも当たり、6枚のハガキが寄宿先に届いた。その中から輸入専門の貿易商の高砂商会に住み込みで就職し、その後の生き方や人生信条に大きな影響を与えた。どんな人のことでも不注意による過失については絶対にこれをとがめずの原則を立てた。

・角栄は鉄鋼会社の新工場や寮、材料置き場の測量、設計、工事業者の選定、監督などを一切請け負って多忙を極める。昭和12年(1937年)19歳で髭の社長となっていた。

・昭和21年(1946年)4月10日、27歳の時に戦後初の衆議院選挙に角栄は立候補したが落選した。新潟全県区で上位10人が当選ラインで落選したものの3万4060票を獲得し、全候補者37人中11位で次点だった。このときの選挙スローガンが「若き血の叫び」だった。しかし、翌年4月、戦後第2回の総選挙が行われ3万9043票で定数5名中3位で当選する。この時、以下の発言があったようです。「皆さあーん。新潟は半年も雪の孤島だ。この雪をなくすため上越国境、三国峠の山を削って平らにする。削った石や土を新潟の海に埋めて佐渡と陸続きにするんだ。三国峠が平らになると、水気を含んだ冬の雲は新潟に降らせない。関東平野まで行く。海の手前で東京の野郎どもの上に雪が落ちる」 この発想は日本列島改造論に結実するようです。

・昭和47年(1972年)7月5日、総裁公選があり、第1回投票は田中角栄156票、福田赳夫150票、大平正芳101票、三木武夫69票。この結果、過半数を制するものがなく、党総裁公選規定により上位2候補による決選投票に持ち込まれ、282票対190票で田中角栄が総理大臣となる。

・もし前佐藤首相が4選しなければ、田中政権ではなく福田政権が誕生していたであろう。

・佐藤政権が7年8ヶ月もあったため、田中角栄が総理大臣となると、国民の期待を反映するかのようにマスコミは「今太閤」、「庶民宰相」、「コンピュータ付きブルドーザー」などと大げさな見出しを付けて、内閣支持率も朝日新聞の世論調査によると新内閣の支持率は62%(不支持率10%)という驚異的な高さだった。

・田中政権の2年間の成果の一つは「日中正常化」であるが、秘話として、難航した会談が終わったあと、周恩来首相が田中にこう話しかけたという。「日本は非核三原則を掲げているが、本当にいつまでも核兵器を持たないでいられるかね」
「いや、非核は本当だ。しかし、日本に核武装させるいい手が1つだけある。中国が沖縄に向けて核ミサイルをぶっ放すと威嚇すればいい。そうすれば、日本はその翌日にでも核を作ってみせる。」田中の啖呵にさすがの周恩来首相も黙ってしまったという。

・昭和51年(1976年)8月、ロッキード事件で逮捕された田中が保釈されたとき、「三木にやられた。三木にやられた。」「おれがこんなになったのは、アメリカのほうからやられて・・・・」神楽坂の芸者の2号の辻和子に話をしたとのこと。彼女との間には二男一女をもうけ、認知し、47年間最後まで面倒を見ていた。

・昭和60年2月7日に「創政会」の設立総会が行われ、予想を上回る衆参40人が参加し、田中派120人の3分の1が集まる。竹下側が勝利し時代は世代交代へ向けて大きく歯車を回す。そんな中、2月27日午後5時半に田中角栄が脳卒中で倒れる。

・平成5年(1993年)12月16日午後2時4分、田中角栄は信濃町の慶応病院で死去する。死因は甲状腺障害による肺炎併発だった。享年75歳。

・自民党の功績に著者は「平等社会」の実現を挙げる。1970年代から1980年代にかけて世論調査をすれば、決まって国民の70%前後は「自分は中流階級だ」と答え、ときにはこの数字は90%に達することもあった。つまり「国民総中流社会」が実現したことになる。ゴルバチョフが羨ましがった社会主義の理想が日本において実現したことにになる。そして、この「平等社会」の実現に最も貢献したのは、田中政治だったと著者は思う。

・田中角栄の「日本列島改造論」は、東海道メガ・ベルト地帯に集中しがちな産業立地を工業化の遅れた北海道、東北、山陰、四国、九州などに誘致再編し、それによって「国土の均てんある発展」を目指し、高速道路、新幹線、公共施設などの公共投資が集中的に行われた。全ての国民に総中流、平等社会の建設を提案した意味で画期的だった。

・ところがバブル崩壊後、自民党政権は逆のベクトルへ向けて走りだした。とりわけ小泉・竹中路線にはこの傾向は著しい。小泉首相は「自民党をぶっ壊す」と叫んだが、彼が標的としたのは角福戦争のライバル、旧田中派の「田中政治」そのものだった。小泉・竹中路線が推進しているグローバリゼーションの社会は、まさしく格差社会で、貧富の格差、都市と地方の格差、教育の格差、給与取得間の格差である。

・読売新聞が2005年4月24日付けで明らかにした世論調査によると、戦後60年間で日本の発展に功績のあった人物として何と1位が田中角栄である。2位吉田茂、3位佐藤栄作、4位松下幸之助、5位中曽根康弘、6位池田勇人、7位本田宗一郎、8位小泉純一郎と続く。しかも田中角栄は1994年の調査でも一位だった。いかに庶民の間で田中角栄人気が根強いかが分かる。

<目次>
第1章 貧しい生い立ち
 平穏な山あいの村に生まれて/怨念の系譜/”度胸”は父親譲り/中学進学をあきらめる/ああ玉杯に花うけて/ガンちゃんと角さんの違い/土方は地球の彫刻家だ/作家を志す
第2章 疾風怒濤の上京時代
 初恋の人、電話三番クン/東京はたいへんなところだ/面会を断られる/転々と職を変える
第3章 幸運は向こうからやってくる
 猛勉強の成果/大河内会長に会う/19歳で髭の社長誕生
第4章 番記者と田中角栄
 政調会長室の美人秘書/肩で風切る主流派記者/佐藤派・田中角栄系/角番記者の仲間たち/早坂秘書と麓秘書の間
第5章 政界進出、闇の政治資金
 初戦敗退/早大雄弁会の応援/謎に包まれた政治資金/小佐野と田中を結ぶ闇の接点
第6章 列島改造への熱き思い
 上越の山脈を何十本ものトンネルでブチ抜け/ルサンチマン(怨念)の結晶/最も成功した社会主義国ニッポン/「列島改造」の栄光と挫折
第7章 角福決戦へ
 炭管事件で初めて堀のあちら側/苦しい選挙戦を勝ち抜く/そのとき、福田赳夫は・・・/角福、生まれながらの対決/藤吉郎とクラウン・プリンス
第8章 282票対190票
 「ウチのバカせがれが」/佐藤4選なかりせば/佐藤首相、4選出馬で迷う
第9章 号砲一発、スタートラインに
 ライバル同士を競わせる/失敗に終わったサンクレメンテ調整/派閥のボスと番記者の生態/角さんがくれた大特ダネ
第10章 天国から地獄へ
 腐臭漂うスタート/周恩来に切った啖呵/田中内閣、最初の挫折/福田、蔵相として再登場
第11章 心耳澄まして
 「おい、弱ったよ」と田中/私が左遷されたわけ/田中とマスコミとの危うい関係
第12章 多情多恨
 アキと呼ばれた女/「二人三脚」と思い定めた日/艷福家田中の素顔/恋の遍歴者
第13章 ロッキード事件は対日謀略か
 「三木にやられた」/角栄逮捕!/アメリカが仕組んだ罠か/謀略説は虚構だった
第14章 闇将軍と呼ばれて
 修羅となった日/第二次角福戦争始まる/キングメーカー健在なり/出るクギは打つ/親殺しの策謀/怨念の炎
終章 生き続ける「英雄伝説」
 田中は巨悪か/政治とカネ/「国民総中流」を実現/偉大な社会主義者・田中角栄
あとがき
参考文献

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<今日の独り言>
 20人ぐらいの飲み会の幹事をしました。長年幹事をしているとある法則に気づきます。それは1割ぐらいは必ずドタキャンがあるということです。それで、今回も店の予約時に思い切って2人減らして予約したのですが、ビンゴでした!1人か2人でかなり迷ったのですが正解でよかったです・・・。まあ人数を増やす予約変更は楽なんですよね・・・。

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